令和6年公益法人会計基準の適用により、控除対象財産の範囲は変わるのか
新しい公益法人会計基準である「令和6年公益法人会計基準」と控除対象財産(公益認定法施行規則第36条第3項各号に掲げる財産)との関係について、最近、相談会やセミナーで複数の公益法人から同様のご質問をいただきました。
そこで今回は、特によくいただくご質問について解説します。
ご質問
令和6年公益法人会計基準を適用すると、控除対象財産の範囲も変わるのでしょうか。
結論
結論は「変わりません」です。
公益目的保有財産、公益充実資金などの控除対象財産に該当するための要件は、公益認定法令や公益認定等ガイドラインによって定められています。
したがって、控除対象財産に該当するかどうかは、法人が適用する会計基準によって左右されるものではありません。
例えば、法令上の公益目的保有財産の要件を満たしている財産は、適用する会計基準を平成20年公益法人会計基準から令和6年公益法人会計基準へ移行した後も、引き続き公益目的保有財産に該当します。
「控除対象財産から生じた果実」の取扱いとの混同に注意
このご質問の背景には、令和7年4月1日に施行された公益法人制度改革との混同があるのではないかと考えられます。
新しい公益法人制度では、指定寄附資金に係る財産(6号財産)から生じた果実について、当然には控除対象財産に含まれないこととされました。
また、公益認定等ガイドラインでは、公益目的保有財産など、ほかの控除対象財産から生じた果実についても同様の考え方が示されています。
この取扱いは、法人が適用する会計基準にかかわらず、令和7年4月1日以後に開始する事業年度から既に適用されています。
つまり、整理すると次のようになります。
- 令和6年公益法人会計基準への移行によって、控除対象財産の範囲が変わるわけではありません。
- 控除対象財産から生じた果実の取扱いが変わったのは、令和7年4月1日に施行された公益法人制度の改正によるものです。
会計基準の変更と公益法人制度の改正は、それぞれ別のものとして整理する必要があります。
控除対象財産と貸借対照表の科目は直接連動しない
ここからは関連する実務上の留意点です。
控除対象財産は、財産目録の「使用目的等」の欄との関係を有しています。例えば、公益充実資金については、財産目録などにおいて、ほかの財産と明確に区分することが要件の一つとされています。
一方、控除対象財産に該当するかどうかは、貸借対照表における科目名や計上額と直接連動するものではありません。
言い換えると、控除対象財産の要件を満たしていない財産を、控除対象財産を含む「○○特定資産」などの勘定科目に計上したとしても、そのことだけで控除対象財産になるわけではありません。
会計上の勘定科目と、公益認定法令上の控除対象財産の範囲は、必ずしも一致しないという点に注意が必要です。
「○○特定資産」に果実を組み入れている場合の注意点
実務上、次のような処理を行っている法人が見受けられます。
従来、公益目的保有財産などの控除対象財産から生じた利息、配当金その他の果実を「○○特定資産」に組み入れ、当該「○○特定資産」の全額を控除対象財産として取り扱っていたケースです。
令和7年4月1日に施行された制度改正後も、果実を従来と同じ「○○特定資産」に計上する会計処理そのものは継続できます。
ただし、同じ勘定科目に計上されていても、その全額が控除対象財産になるとは限りません。
令和7年4月1日以後に開始する事業年度に生じた果実のうち、控除対象財産の要件を満たさないものについては、次のような対応が必要です。
- 財産目録では、「控除対象財産」と「控除対象財産に該当しない財産」を明確に区分する
- 定期提出書類の別表C(2)「控除対象財産の一覧」には、控除対象財産に該当しない果実を含めない
したがって、「○○特定資産」という一つの勘定科目の中に、控除対象財産とそれ以外の財産が混在する可能性があります。
この場合には、帳簿上または補助簿上でそれぞれの金額を把握し、財産目録および別表C(2)へ適切に反映できるよう、管理方法を整えておくことが重要です。
まとめ
令和6年公益法人会計基準を適用しても、それだけで控除対象財産の範囲が変わることはありません。
一方、令和7年4月1日に施行された公益法人制度の改正により、控除対象財産から生じた果実の取扱いには注意が必要となりました。
特に、控除対象財産とそれ以外の財産を同じ「○○特定資産」に計上している法人では、貸借対照表の勘定科目だけで判断せず、財産目録や定期提出書類の別表C(2)において適切に区分することが重要です。
なお、控除対象財産に該当するかどうかは、財産の取得経緯、使用目的、管理方法などによって個別に判断する必要があります。具体的な取扱いについては、公益認定法令、最新の公益認定等ガイドラインおよび所管行政庁の見解をご確認ください。
